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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)124号 判決 1968年7月18日

主文

原判決中上告人敗訴の部分を破棄し、右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

原判決の確定するところによれば、被上告人は、昭和二三年五月二六日上告人よりその所有の本件土地を普通建物所有の目的で賃借したが、その地上に建物を所有することなく推移していたところ、上告人は、昭和三六年一一月二五日訴外高橋正三に本件土地を売り渡した。その際、上告人は、右売買の仲介人石毛勝利に本件土地を他に賃貸している旨を告げ、高橋をして本件土地に借地権が設定されていることを知ることをえしめただけで、右高橋との間で被上告人に対する土地賃貸人の地位承継に関する契約を締結しなかつたというのである。その結果として、被上告人は、右高橋および同人よりさらに本件土地を買い受けた訴外朴弘烈に対し、上告人との間の前示土地賃貸借契約における賃借人としての地位を主張し得なくなつたことは、原判決の判示するとおりであるが、それは、被上告人が建物保護ニ関スル法律一条による保護を受けるのに必要であるところの本件土地上に登記のある建物を所有しなかつたためにほかならず、これをもつて直ちに上告人が違法に被上告人の権利を侵害したものということはできない。

以上の次第であるから、原判決の確定した事実だけでは、上告人は被上告人に対し前示土地賃貸借契約により負担する本件土地を使用収益せしめる債務が履行できなくなつたことが認められるだけであつて、上告人はそのことにより被上告人に生じた債務不履行上の損害賠償責任を負担することがあるのは格別、違法に被上告人の権利を侵害したとして不法行為による損害賠償責任を負担する理由としては十分でないものといわなければならず、原判決中被上告人勝訴の部分は、この点において破棄を免れない。本件は、なお審理判断する必要があるから、原審東京高等裁判所に差し戻すべきである。

よつて、上告代理人の上告理由に対する判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

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